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コラム ステッピングモータをお使い頂くために 「モータ編」 掲載月
01 「今月号より新シリーズです」 2010年07月号
02 「電動モータって何?」 2010年08月号
03 「電動モータって何?(2)」 2010年09月号
04 「電動モータって何?(3)」 2010年10月号
05 「電動モータって何?(4)」 2010年11月号
06 「ステッピングモータの構造(1)」 2010年12月号
07 「ステッピングモータの構造(2) -概要-」 2011年01月号
08 「ステッピングモータの構造(3) -相数-」 2011年02月号
09 「ステッピングモータの構造(4) -ロータ構造-」 2011年03月号
10 「ステッピングモータの構造(5) -トルク伝達方法の違い-」 2011年04月号
11 「ステッピングモータの構造(6) -コイルの巻き線方法-」 2011年05月号
12 「ステッピングモータの構造(7) -コイルの結線線方法1[2相・3相]-」 2011年06月号
13 「ステッピングモータの構造 -コイルの結線線方法2[5相]-」 2011年07月号
14 「ステータ磁極誘導子とロータ小歯の磁力バランス(1)」 2011年08月号
15 「ステータ磁極誘導子とロータ小歯の磁力バランス(2)」 2011年09月号
16 「ステータ磁極誘導子とロータ小歯の磁力バランス(3)」 2011年10月号
17 「ステータ磁極誘導子とロータ小歯の磁力バランス(4)」 2011年11月号
18 「ステッピングモータはデジタル? ― 雑談タイム1 ― )」 2011年12月号

コラム ステッピングモータをお使い頂くために 「ドライバ編」 掲載月
19 ステッピングモータを動作させる装置―概観― 2012年01月号
20 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(1) 2012年02月号
21 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(2) 2012年03月号
22 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(3) 2012年04月号
23 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(4) 2012年05月号
24 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(5) 2012年06月号
25 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(6) 2012年07月号
26 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(7) 2012年08月号
27 ブレイクタイム --ステッピングドライバは進化する-- 2012年09月号
28 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(8) 2012年10月号
29 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(9) 2012年11月号
30 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(10) 2012年12月号
31 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 「相分配回路」(1) 2013年01月号
32 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 「相分配回路」(2) 2013年02月号
33 ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 「相分配回路」(3) 2013年03月号


<01 メールマガジン:2010年7月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(1)
  「今月号より新シリーズです」 

 本コーナーで連載しておりました「特許に関するキーワード」シリーズを、お読み下さいましてありがとうございました。今月号より、マイコム製品や技術をより多くの方々により深く知って頂くために、新たな連載を開始させて頂くことになりました。

 弊社はステッピングモータを制御する技術を核に、動かす装置(ドライバ)、指令する装置(コントローラ)そしてGUIや制御アルゴリズム(ソフトウェア)の研究開発を行うものづくり企業です。
 またこれら自社技術を組み込んだ機構製品(ロボット)もユーザ様にご提供させて頂いています。ステッピングモータ制御に関する製品を、上流(ソフトウェア・コントローラ)から中流(ドライバ)、そして下流(モータ)まで網羅していると自負しています。

 本コラムは、ステッピングモータをよく知って頂くことでステッピングモータファンを増やしたいという願いを込めて始めさせて頂きます。ステッピングモータがより多く使われるようになり、弊社製品も貢献する機会を増やすことが出来れば幸いです。

 ステッピングモータは電源さえ用意すれば動作するモータではありません。前述の中上流に位置する制御装置が必要であり、これら制御装置の善し悪しがステッピンモータの特性に影響する関係にあります。
つまりステッピングモータを知って頂くことは、その制御装置についても知って頂くことに結びつきます。コラムは、上流へと遡るように展開していく予定です。
 本コラムは技術的な内容となりますが、ステッピングモータをお使いになったことのない方や営業をご担当されている方々に、弊社技術をご理解頂けるよう心がけて参ります。是非とも、お付き合い下さいますようお願い申し上げます。

 前置きが長くなってしまいました。
 次回より「ステッピングモータって何?」と題して、まずステッピングモータそのものに注目して頂き、話を進めていく予定です。そこで、次のフレーズを是非とも次回までお心に留め置いて頂けたら嬉しい限りです。

 「ステッピンモータは止まることが得意なモータ」

 このフレーズは、本コラムの基調でもあります。実際、ステッピングモータに電源を投入すると回転することなく、励磁原点というポジションにじっと止まりけっして回転しません。電池に繋ぐと回転を始める小型DCモータとは、大きく異なります。
 止まることが得意であるので位置決め制御にはもってこいのステッピングモータですが、目標位置までは動いていかなければなりません。
さてどうやって動かすのか?モータの内部構造に何か秘密があるのか?と言った話を、次回から進めて参りますので、よろしくお願い申し上げます。 <mt>


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<02 メールマガジン:2010年8月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(2) 「電動モータって何?」 

「ステッピンモータは止まることが得意なモータ」
 このフレーズは、ステッピングモータの特徴を良く言い表していると筆者は考えています。このステッピングモータというモータを知って頂くために、その構造の特徴と言った機械的成り立ちを先ずご理解頂ければと思います。
 まずモータとは?です。
 モータとは“動かす装置”であり、水力によるものもあれば空気圧や蒸気と、その動力源は様々です。その中で電気エネルギーを動力源とするものを電動モータと分類しており、ステッピングモータはその一種です。以後この電動モータをモータと呼ばせて頂きますので、お願い致します。
 モータは更に、電気エネルギーの変換原理(磁界・電界・超音波)、電源種別(直流・単相・三相)、動作特徴(速度同期/非同期・回転一方向/双方向)、というように多岐に渡ります。それらがマトリクスに重なり合って、複雑です。
 しかしこの事は、用途に適したモータを選択できるよう創意工夫された結果であり、広く使われている事を示していると言えます。
 これらモータの中で磁界により動作するものを電磁モータと言い、電気エネルギーを磁力に変換し、N極とS極との引き合う/反発し合う作用で機械エネルギーに変えらえモータ軸は回転します。直動(リニア)するモータもありますが、原理は同じです。
 ステッピングモータは磁界を利用とする電磁モータであり、電源種別には依存せず、速度同期の回転双方向モータです。

 私達の身の回りのいろいろな場所に、様々なモータが使われています。電車、エレベータやエスカレータの駆動、エアコンや冷蔵庫と言った家電、電気掃除機などはモータそのものです。またパソコンのハードディスクドライブや冷却ファン、プリンタの紙送りやFAX・スキャナのイメージリーダ部は小型モータの活躍の場です。ステッピングモータを使えば、機械式時計は簡単に作ることができます。このように私達は、モータに囲まれて暮らしています。

 さてこれら電磁モータの構造です。
 小学校の理科の実験で、モータを作った経験をお持ちと思います。
永久磁石2個をN極とS極を対向させて固定し、その間に整流子によって電流の向きを変えられるようにしたコイルを置いた、ブラシモータの原理を姿にした実験装置です。この永久磁石とコイルが、電磁モータを構成する基本要素です。この永久磁石とコイルを様々な形状にすることで、いろいろな構造を持つモータが生み出され用途にあった特性を発揮します。
 さてこの実験モータはコイルに電流を流すだけで回り、特別な駆動回路を必要としないシンプルな構造です。簡単に回るモータなのですが
『右回転する時と左回転する時がある』『回転しないので指で押したら回転を始めた』といった経験はありませんでしたか。この現象は「回したいのに止まっている」状態で「止まることが得意」とは異なります。
 何故そうなるのでしょうか。
 構造の説明には、やはり図を用いた方が判りやすいと思います。
次回はアニメーションを交え、電磁モータの構造と動きを概観する予定です。<mt>


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<03 メールマガジン:2010年9月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために (3) ■

  「電動モータって何?(2)」 

 電磁モータは、どのようにして動くのでしょうか。
 今回は最も構造が簡単な2極ブラシモータを例に取り、動画を使ってその動きを調べてみます。


「動画1」
「図1」
 
「図2」 「図3」
 
「図4」 「図5」(図2と同じ)

 図1は、ブラシモータの基本構成です。
(1)永久磁石は、S極とN極が向かい合うように配置されます。
(2)コイルは、鉄芯(灰色)に導電線(緑色)が巻かれています。
 このコイルに電流が流れると磁界が発生し、永久磁石との間に押したり引いたりする磁力が生まれ、モータ軸を回転させるトルク(力)となります。
(3)整流子は2つに分かれ、それぞれがコイルの両端に繋がっています。
(4)ブラシはそれぞれ+と−の電源に繋り、整流子を挟んでいます。
 ブラシは固定さていますが、整流子はコイルと共に回転します。
 つまり整流子それぞれは回転位置により、電源の+と−とに交互に繋がります。従ってコイルに流れる電流の向きが変わり、コイルの磁界の向きが変わります。整流子は、コイル電流の向きを切り替える役割を持ちます。この4つが、モータの基本構成です。

 動作は、やはり目で見て頂いた方が判り易いでしょう。
 動画1をご覧下さい。
 「整流子に隙間がありその隙間はコイルの中心線から少しずれている」、「ブラシの位置にその隙間が来た時はコイルには電流が流れない」点に注目して下さい。

 図1の静止状態に通電すると図2になり、永久磁石に対しコイルの磁力は反発し時計方向に回転を始めます。回転していくと今度は永久磁石に引かれて行きます(図3)。そしてコイルが水平になる直前に整流子の隙間がブラシの位置に来て、コイルには電流が流れなくなります(図4)。
モータ軸は慣性で回転を続け、整流子がブラシに接すると電流がこれまでと逆向きに流れ(図5)、図2と同じ状態になります。
 この動作の繰り返しで、モータは回転します。このように整流子によってコイルの磁界の向きが切り替わり、一定の方向に回転するのが電磁モータの動作原理です。

 モータ回転の仕組みが、お判り頂けたでしょうか。

 ところで(図4)の位置にコイルが止まっている状態で、電源を入れたらどうなるでしょうか。コイルに電流は流れないので回転トルクが発生せず、モータは動きません。前回『回転しないので指で押したら回転を始めた』とお話ししたように、整流子がブラシに触れる所まで指でコイルを押してやれば回転を始めます。
 しかし指で押さないと回転を始めないモータでは、実用的ではありません。また回転の途中でコイルに電流が流れない、つまり回転トルクが発生しない区間が有ることも実用とするには問題です。

 次回は、実用となるブラシモータの構成についてお話しします。
 なかなかステッピングモータの説明に至りませんが、しばらくお付き合い下さい。
(mt)


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<04 メールマガジン:2010年10月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために (4) ■

  「電動モータって何?(3)」

 前回の2極ブラシモータの動作説明で、コイルがある位置に止まると再度通電しても回り始めないことをお話しました。

 前回9月号の図4に示す位置です。

「図4」

 整流子がブラシに接触していないのでコイルに電流は流れず、磁力が発生せず回転できません。
 この状態はモータが回転している時でも、モータ軸1回転中に2回あります。
 トルクが発生しない所があっても、回り始めたモータは慣性で回り続けます。
 しかし、回転中に無トルクの区間があることは、トルクのムラとなり安定した回転が得られず問題です。
 もう一つの注目点は、コイル(鉄心)両端面と永久磁石面とが平行になり対向する位置、図ではコイルが水平になる位置でコイルに磁力を発生させると回転動作の妨げになる事です。この時発生する磁力の方向はモ−タ軸の回転方向に直交するため、回転させる力にならないばかりか回転を止めようとする力となります。
 これらの問題点を解消するために考案されたのが、3極ブラシモータです。
 図と動画を用意しましたので、下図をご覧下さい。


「動画2」
「図6」
 
「図7」 「図8」
 
「図9」 「図10」

 3極ブラシモータの進化した所は、コイルが3極になり整流子が3つになった点です(図6)。
 この構造により2つ以上のコイルには必ず電流が流れるので、コイルの停止位置に関わらず通電すれば回転を始めます。また永久磁石に対向するコイルには電流は流れないように整流子を配置しているので、回転を妨げる磁力も発生しません(図8・10)。
 ブラシモータは、学校の教材にもなるほどの、電動モータの基本中の基本です。その動作原理をご理解頂けましたでしょうか。
 ちなみにブラシモータのブラシと整流子は、機械的に接触しているため摩耗します。耐久性を求められるシステムや粉塵を嫌う環境では使えません。機械的接触なので回転中にモータ内で火花が飛ぶので、引火性雰囲気では使用不可です。
 これらの欠点を克服するためにブラシレスモータが作り出されました。
文字通りブラシや整流子は無く、代わりに電子回路によりコイル電流がON/OFFされます。

 ブラシモータを始めとする磁力が一方向のみに作用する誘導モータは、回る事を得意としています。止まる事は不得意なので、停止位置を制御する事は出来ません。
 そこで止まる事が得意なステッピングモータの出番となります。
(mt)


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<05 メールマガジン:2010年11月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために (5) ■

  「電動モータって何?(4)」

 ブラシレスモータについても説明がほしいとのご要望がありましたので、今月号ではその構造について概観します。ステッピングモータの構造をご理解頂くための橋渡しとしても、重要と考えました。

 下図をご覧下さい。

「動画3」

  「図11」

停止している状態
「図12」
「図13」

停止している状態

 これまでから大きく異なる所は、コイルがステータ側に移り、ロータが永久磁石になった点です。

 ロータ側にコイルを配する構造は、ロータ凸部をコイルにしてからステータ内に差し込めば良く、作りやすいと言えます。コイルと電源は整流子とブラシとの接触で通電しているので接続は固定ではなく、故にロータが回転しても通電線がよじれる事はありません。

 ブラシレスモータは整流子とブラシを持たずコイルと電源は固定された接続になるので、ロータ側のコイルでは通電線がよじれます。コイルをステータ側に移し、ロータに機械的自由を与えます。ステータの内側にコイルを作るのは手間ですが、ブラシの摩耗、金属粉や火花の発生といった問題点が解消され他にも利点を持ちます。

 ブラシレスモータの構造は色々ありますが、動画3に示した構造ではコイルの励磁を電子回路で切り替えられます。切り替えタイミングを速くすればモータ回転は速くなり、速度制御が可能なスピードコントロールモータになります。またコイル励磁順を逆にすると、逆回転もできるリバーシブルモータになります。これらの特性を持つモ−タを、一般的に誘導(インダクション)モータと言います。
 電源極性や印加電圧を変えないと回転方向や速度が変わらないブラシモータと比べた利点です。

 図11・12・13に、コイルの励磁切り替わりに対応するロータ回転の一場面を示しました。図11は、コイルとロータの磁力バランスが釣り合い停止した状態です。図12でコイル励磁が切り替わって回転し、図13でまた釣り合って停止します。図の構成では、通電したまま決まった位置にロータを停止させる事が出来ます。
 ですが、この誘導モータは位置決め制御に適していません。
 それは誘導モータがステッピングモータに比べ、コイルとロータ磁極の数が少ない事に起因します。
 切り替わりがゆっくりの励磁には、ロータの回転は追従します。
切り替わりが、早くなるに従ってロータ回転に遅れが生じ、早くから遅くに転じるとロータ回転の方が先に進む動きになります。これが“滑りモータ”と言われる理由です。“滑り”は慣性であり、それを利用し回る事を得意とする誘導モータがあります。
 しかし“滑る”故に、位置決め制御には適しません。
(mt)


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<06 メールマガジン:2010年12月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(6) ■

 「ステッピングモータの構造(1)」

 誘導(インダクション)モータは、滑りモータとも呼ばれます。回転させるためにコイルの励磁を切り替えますが、例えば10回転分の励磁切り替えを行ってもロータが10回転しているとは限りません。故に滑りモータと呼ばれるわけですが、この事は不具合ではありません。外力によって回転速度が変化しても、コイルの励磁切り替わり速度に追従しようします。
 この追従動作はモータ駆動装置の制御によるものですが、滑りモータはその制御に適した構造と言えます。回る事を得意とするインダクションモータは負荷変動に柔軟に対応できる利点を持ちますが、指定した位置には止まりません。止める事を目的としたモータではないので、位置決め制御には用いられません。

そこで、ステッピングモータです。

止まる事を得意とするステッピングモータの構造を、先ず見ていく事にします。
下記に、ハイブリッド型2相ステッピングモータの内部が判る写真を載せました。

「写真1」
 
「写真2」 「写真3」

 写真1はモータ本体からロータを抜き出したもので、右下手前からブラケット、ロータ、ステータです。ステータにコイル、ロータに永久磁石の構成はインダクションモータと同じですが、止まるための工夫が施されています。
 写真2はステータス内側のコイルの様子で、コイルは8個ありピッチは45°です。ひとつのコイルの鉄芯に5本ずつ、ロータに向かって歯が刻まれています。
 写真3はロータの拡大で、円筒状の永久磁石に歯車状に歯が刻まれています。二つの歯車が並んだような構造で、それぞれ50歯(ピッチ7.2°)あります。手前がN極で奥がS極、歯は3.6°ズレています。
 なお写真1のロータに付いている小さな円板はベアリングで、ブラケットの軸受け部に収まります。
 筆者はステッピングモータの制御に従事したての頃、先ずモータを分解してみました。その時の印象は歯車のようだ、でした。ステータ歯とロータ歯とは機械的に接触はしていませんが、磁気的なバランスによって歯車のような動きをする、と考えるのが判りやすいと現在でも思っています。
 これらの歯が、ステッピングモータの構造の最大特徴であり、回り止まるためのミソです。

「図14」

 図14に、コイルとロータの一部を図示しました。ステータ歯はピッチ7.5°でロータ歯は7.2°と違っているので、ステータ中央歯とN極歯と位置関係は、例えばA相では対面しB相では1.8°のズレがあります。

 構造の説明は次号に続きますが今回はステータ歯とロータ歯とのズレが、ステッピングモータが回りそしてきちんと止まるための構造的仕掛けである、とご記憶ください。(mt)


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<07 メールマガジン:2011年1月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(7) ■

 「ステッピングモータの構造(2) -概要-」

 あけましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願い申し上げます。

 これまでコイルとロータの関係を主に誘導モータの構造と動作原理を概観し、昨年の12月号ではステッピングモータのコイル歯とロータ歯のズレがその特徴である「止まる事を得意とするモータ」の特徴点である事を説明しました。

 今月号からは、動作原理については一旦おき、構造を詳しく見ていく事にします。

構造から見るとステッピングモータは、一般的に次のように分類されます。

(1)相数の違い:1相・2相・3相・4相・5相

 簡単に言えば、コイル数の違いです。2相だからといって、コイルが2コとは限りません。
 相数の違いは、制御角度の違いに反映します。一般論として相数が多くなれば、制御角度は細かくなります。

(2)ロータ構造の違い:VR型・PM型・HB型

 ロータ部に永久磁石が用いられているのが、PM型とHB型です。PM型は円筒状で、HB型は歯車状です。VR型ロータも歯車状ですが、永久磁石ではなく鋼材等で作られています。
 PM型とHB型ロータはコイル磁力に、引かれたり押されたりされます。VR型ロータは、コイル磁力に引かれるのみです。
 PM型とVR型の良いところを組み合わせたものが、HB(Hybrid=ハイブリッド)型です。

(3)トルク伝達方法の違い:リニア・アウターロータ

 これまでにお話ししてきましたステッピングモータは、ロータ軸が回転し機構に力を伝達する形態です。これからも説明の中心はこの形態です。一方、回転ではなくリニア(直線)に力を伝達するのがリニアステッピングモータです。またロータ部が固定され、ケース部分が回転するものがアウターロータモータです。

 その他に、コイルの設置方法(円周分布/軸方向縦続)や巻き線方法(ユニファイラ/バイファイラ)の違い、モータ駆動電流の方向(ユニポーラ/バイポーラ)の違いによる分類があります。

 ちなみに前月号で分解し写真でお見せしたステッピングモータは、2相ユニポーラです。ここまでは分解しなくても判りますが、分解してみるとHB型で相配置は円周分布型であると判ります。巻き線方法は、予想は出来ますが正確には仕様書を確認するか巻き線をほぐしてみないと判りません。

 このようにステッピングモータは特性向上を得るため、また用いる機構の必要に応じいろいろな形態に進化してきました。

 次月号から前述の(1)(2)(3)を中心にして、ステッピングモータの構造について説明していく予定です。

 本年も引き続きお付き合い下さいますよう、お願い申し上げます。(mt)


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<08 メールマガジン:2011年2月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(8) ■

 「ステッピングモータの構造(3)-相数-」

 ステッピングモータの構造について、まず相(phase)から説明を始めます。
 相は、電動モータでは電気的に磁力を発生させる機構を言います。
 三相交流モータと言うようにステッピングモータに限らず電動モータに用いられる用語でもあります。電気的に磁力を発生させる機構にコイルがあり、原理が簡単でありまた作りやすいため電動モータに広く用いられています。
 相については工学的な定義はありますが、ここではコイルを示すと考える事にします。
 相に関連するモータ各部位の名称について、図15に示しました。
 下図を、参照ください。今月号で参照する図16・17・18も、載せました。

 
「図15」

「図16」

「図17」 「図18」

 ステータの内側、モータ中心方向に凸構造が形作られていて、コイルが巻きやすいようになっています。これが磁極です。本コラム12月号に掲載した写真2でもよく判りますが、その一部を断面図にしたのが図15です。
 この磁極のロータに対する面には溝が切られ、歯車状になっています。これを、磁極誘導子と言います。

 歯車状誘導子の構造は、ステッピングモータのハイブリッド(HB)型に特有のものです。HB型の説明は、来月号で行います。
 また誘導子はロータ側にも歯車状に設けてあり、ロータ小歯と呼んでいます。
 この磁極誘導子とロータ小歯のピッチの差が、ステッピングモータの基本ステップ角を決めます。つまり都合良くそれぞれのピッチを設ければ、いろいろな基本ステップ角が得られます。このことは初夏頃に本コラムでお話する予定です。

 さて、相は通電の有無によって磁力が有る無しの状態を取ります。
また通電の大きさによって磁力の大きさが決まり、方向によってN/S極が切り替わります。相への通電は制御回路によって行われますが、相を電流切り替えスイッチ付きのコイルと言う事が出来ます。
 このスイッチ付きコイルを二つ設けたものが、2相ステッピングモータです。
コイルが三つなら3相、五つなら5相になります。各コイルは、それぞれ独立して制御されます。複数のコイルを同じスイッチに接続したら、それは電気的に一つのコイルであり1相になります。
 図16は、2相ステッピングモータ(HB型)の磁極の構成を示したものです。
四つの磁極がA相となっています。B相も同様です。A相については、コイルの巻き線方法を赤線で示してあります。
 この図では1相あたり四つのコイルで構成されている事になり、これまでの説明と矛盾します。しかしそれは見かけ上の事であって、巻き線箇所が複数の磁極にまたがっていますが一つのスイッチに繋がる電気的に一つのコイルであり1相です。

 図17と図18に、3相と5相ステッピングモータの磁極構成を示しました。
一つの相が複数の磁極で構成されていても電気的に1相であることは、2相に同じです。なお相の名称を、アルファベットで統一しました。また図の磁極数は一例で、相数の倍数の構成が可能です。

 ところで、図16の赤線で示した巻き線に通電した状態を想像して下さい。
 電流の左方向に磁界が発生します。フレミングの左手の法則です。
モータ上部の端子から通電したとすると、上下のA相の磁界はモータ中心に向かい、左右はその反対方向になります。
 つまり上下の磁極がモータ中心に向かってN極ならば、その時左右の磁極はS極になります。こういった構成方法を取る事で安定したモータ回転が得られます。(mt)


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<09 メールマガジン:2011年3月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(9) ■

 「ステッピングモータの構造(4)- ロータ構造-」

 ステッピングモータの構造説明の続きは、ロータ構造の違いについてです。
 構造そのものや小歯の数といった違いがロータにはあり、分類が多岐にわたります。またロータ構造が異なれば、相方のステータやコイルの構造もそれに合わせ異なります。

 ここではロータ構造の違いを、一般的に大分類として区別されているVR型・PM型・HB型の3つについて説明します。

下記に、構造原理を示す図19・20・21を示しました。

・VR型:Variable Reluctance Type 可変リラクタンス型 →図19
・PM型:Permanent Magnet Type 永久磁石型 →図20
・HB型:Hybrid Type 複合(ハイブリッド)型 →図21

「図19」

「図20」

「図21」

 これまでに説明に用いてきた図の多くは、図21のHB型です。この図に示したものは、HB型の実際に近い構造です。図19VR型・図20PM型は構造の原理を示したもので、実際にはもっと込み入った構造です。
PM型のコイルはヨークと呼ぶ鋼板で筒状に囲まれ、ロータに面する側に切り曲げ起こし加工(クローポール)された極歯が並びます。

 さてそれぞれの構造的な大きな違いは、
ロータが永久磁石なのがPM・HB型で、鋼板・軟鋼で出来ているのがVR型、ロータに歯が刻まれているのがVR・HB型で、歯が無く円筒状なのがPM型、磁極にコイルが巻かれているのがVR・HB型で、ロータを囲むようにコイルが巻かれているのがPM型、が上げられます。PM型のコイルにはいろいろなこれとは異なる形も考案されており、図20はクローポール(Claw Pole)型です。

 HB型は、PM型とVR型の良いところを組み合わせたものです。他の型に比べて、ステップ角を小さくできトルクや速度特性が優れています。
 ロータが永久磁石で出来ているHB型とPM型は、コイル磁力から押されたり引かれたりするので、トルクと角度精度が得やすい利点を持ちます。VR型ロータはコイル磁力に引かれるだけです。

 またロータが歯車状なっているHB型は歯の先端に自身の磁力が集中するので、コイルに対するロータ位置つまり角度精度が得やすくなります。

 VR型は、詳しい説明は省きますが、構造的特徴からモータ長を軸方向に長く取れます。細長いスペースにモータを設置する場合に適していますが、最近は見かけません。PM型はHB型に比べ安価に製造できるので、さほど角度精度が求められていない機器に多く使われています。

 なお弊社が扱っているステッピングモータは、HB型が中心です。
 半導体製造装置や部品実装装置、複数のモータが協調動作を行う多関節ロボット等、位置決め精度や速度制御が要求される機器に搭載されています。

本コラムは今後、HB型を中心に進んでいきます。(mt)


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<10 メールマガジン:2011年4月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(10) ■

 「ステッピングモータの構造(5)- トルク伝達方法の違い-」

 ステッピングモータの構造について前々月号より「相数の違い」「ロータ構造の違い」を説明してきましたが、今回は「トルク伝達方法の違い」です。
 これまでにお話ししてきましたステッピングモータは、ロータ軸が回転し機構に力(トルク)を伝達する形態です。内側にコイルが巻かれているステータ(stator)部であるモータケースが機構に固定され、ロータ(rotor)部と一体となったモータ軸が回転する事で得られるトルクを利用します。
この構造はインナーロータモータと分類されますが、この呼称はあまり聞きません。

 これとは異なるトルク伝達方式のアウターロータステッピングモータがあります。その名の通り、モータケース部が回転します。
 インナーロータモータの軸を固定しステータ部を固定しなければ、ステータ部が回転します。でもこれではアウターロータモータにはなりません。モータに電力を供給するリード線も一緒に回転するので、ケースに巻き付いてしまいます。
下記に、VR型アウターロータステッピングモータの概念図を示しました。(図22)

「図22」

モータケース側がロータになり、小歯構造の永久磁石が内周内向きに取り付けられています。HB型もありいろいろな構造が工夫されていますが、ここでは概念をご理解頂くことに止めます。

 アウターロータの利点は、同サイズのインナーロータに比べロータ直径が大きいのでトルクが比較として大きく得られます。この事は長さが短い(平たい/薄い)モータが作れるというメリットに繋がります。一定の低速が必要とされるダイレクトドライブ機構に向いたモータです。しかし、運転と停止の頻繁な繰り返しや速度を可変する用途には、適していません。

 アウターロータもインナーロータも、構造的に円筒型で動作は回転することでトルク出力します。一方、回転ではなくリニア(直線)に力を伝達するのがリニアステッピングモータです。

「図23」

 図23に概念図を示しました。リニアステッピングモータの構造は移動子と固定子からなり、当然ですが回転子はありません。固定子には小歯が直線上に刻まれ、コイルと一体化した移動子と対になった構成です。
 シリンダー等の直動機構そのものがモータを兼ねる構成であるので、別途動力源を用意する必要がない利点を持ちます。

 このようにいろいろなトルク伝達方法がありますが、コイルの磁力によって位置決めを行うと言った共通の原理です。従いまして、今後はインナーロータのHB型ステッピングモータを中心に、本コラムを進めていきます。

 さて「ステッピングモータの構造」説明は今回で終わりですが、次月号では関連説明としてコイルの巻き線方法についてお話しします。(mt)


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<11 メールマガジン:2011年5月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(11) ■

 「ステッピングモータの構造(6) -コイルの巻き線方法-」

 今月号では、ステッピングモータの構造に関連するコイルの巻き線について説明します。
 ステッピングモータに限らず電動モータに、コイルは欠かせません。
 コイルは磁極となる鉄心に導電線を巻き付け、通電により磁力を発生させます。
 巻き数を多くするほど鉄心を囲む線長が長くなり大きな磁力を発生できますが、モータ内のスペースに限りがありますので巻き数には限りがあります。導電線を細くすれば限られたスペースにより多く巻き付けられますが、大きな電流が流せなくなり磁力を大きくする事には限界があります。
 このようにモータには、線材の耐久性や鉄心となる鋼板の加工方法、巻き線の均一性や組立コストの低減化等を研究し、効率よく磁力を発生させるために創意工夫が集まっています。
 今回は相違工夫の一つであるモータコイルの巻き方について、知って頂きたいと思います。

 さてコイルの巻き方ですが、ユニファイラ(unifilar)巻きとバイファイラ(bifilar)巻きとがあります。
 VR型のようにロータ小歯が鉄で作られている構成ではステータ誘導子は磁力を発生させるだけで良く、SでもNでも磁性は問いません。
が、HB型のように永久磁石で構成されるロータ小歯を引いたり押したりする構成では、決められた順序でSまたはNに切り替える必要があります。
つまりコイルへの通電方向を切り替え、ステータ誘導子をSやNにする必要があります。
 この通電方向を切り替えるのがステッピングモータの駆動方式で、バイポーラ方式とユニポーラ方式とがあり、コイルの巻き方に密接に関連しています。

<バイポーラ方式:ユニファイラ巻き線>
駆動装置の出力電流方向が切り替わるバイポーラ方式には、ユニファイラ巻き線が対応。

下記、図24に巻き線イメージ図を示しました。コイル端子A+からA−へ通電される場合とその逆があり、ステータ誘導子がSやNになります。
「図24」
<ユニポーラ方式:バイファイラ巻き線>
駆動装置の出力電流方向が1方向であるユニポーラ方式には、バイファイラ巻き線が対応。

 図25が、巻き線イメージです。バイファイラでは図26の巻き線構成図が示すように、コイル中間点から端子C(コモン)が引き出されており、赤線部と緑線部に二分された構成を取っています。

「図25」
 ユニポーラ方式の駆動装置からの出力電流は1方向のみで、端子Cからコイルに入ります。この電流がA+(赤線部)へと流れる時とA−(緑線部)へ流れる時とに制御されます。それぞれでコイル通電の方向が逆になり、ステータ誘導子がSやNになります。

 バイポーラ/ユニポーラ方式は、主に2相ステッピングモータの制御方法にどちらも多く用いられています。バイポーラ方式はモータトルク特性に利点があり、ユニポーラ方式は高速特性や駆動回路の簡便さに利点があります。なおバイポーラ/ユニポーラ方式は駆動装置であるドライバの話まで進みましたら詳しく説明します。(mt)


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<12 メールマガジン:2011年6月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(12) ■

 「ステッピングモータの構造(7) -コイルの結線線方法1[2相・3相]-」

 先月号ではコイル巻き線方法ついて説明しましたが、今月号ではステータ内周にあるコイルとコイルとの結線(接続)方法について説明します。

 ステッピングモータには主に2・3・5相があり、モータ特性そして作りやすさ等からいろいろなコイル接続方法が提案されています。

 まず下記の図27に示した、2相バイポーラ型モータ(ユニファイラ巻き線)のコイル結線方法をご覧下さい。

「図27」

 現物に近い図示ですが、本コラム’10年12月号に掲載の写真2を見て頂ければわかるように、実際にはコイル間の接続線はロータ回転の邪魔にならないところに配線され簡単には見えません。

 しかしこの図は判りにくく、5相モータをこの図法で描いたなら判りにくいだけとなってしまいます。そこで図28以降はコイルの接続関係が判るように簡略化したもので、AやBといったリード端子との繋がりも判りやすくしました。このように描かれた図は、ステッピングモータの取扱説明書等に良く見かけます。

2相 バイポーラ結線
「図28」

 さて図28は図27と同じ2相バイポーラ結線図で、それぞれのコイルに接続関係はありません。コイルの両端は端子A・/A・B・/Bへ、そしてモータ外部へリード線として出でています。2相バイポーラ結線モータのリード線は4本で、このリード線に電流が出たり入ったりします。

2相 ユニポーラ結線
「図29」

 図29はユニポーラ結線図です。2相モータでリード線が6本なら、ユニポーラ結線モータです。A-COM・B-COMから電流が入っていくのが一般的な駆動方法です。巻き線方法はバイファイラです。またA-COM・B-COMを使わなければ、バイポーラ駆動も可能です。なおCOMはCommonの略です。

2相 新2相結線
「図30」

 図30は、弊社発案のコイル結線方法で、新2相結線と呼んでいます。バイポーラ構成コイルの中間点が接続されていて、バイポーラ駆動とユポーラ駆動を組み合わせる事ができる結線方法です。
電流をコイル全部に流したり半分だけにしたりする駆動方法で、特徴あるモータ回転角が得られます。

次は3相ステッピングモータです。

3相 デルタ結線
「図31」
3相 スター結線
「図32」

 3相モータは3個のコイルで構成され、結線方法には図31・32に示したデルタとスターがあります。この2種は共にリード線3本なので、モータ外観からは区別できません。
 リード線6本の、コイルを結線しない3相独立型もあります。

 このようにコイルの結線方法にはいろいろあり、それぞれの駆動方法は異なります。つまり電流のON/OFFや向きを切り替える励磁パターンが異なります。例えばバイポーラ結線モータを、ユニポーラ駆動装置(ドライバ)の励磁パターンで駆動はできません。

 励磁パターンのお話しは、今後に予定しています駆動装置(ドライバ)の説明時に詳しくする事にします。

次号は結線方法の続きで、5相ステッピングモータです。(mt)


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<13 メールマガジン:2011年7月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(13) ■

 「ステッピングモータの構造 -コイルの結線線方法2[5相]-」

 現在ではマイクロステップ駆動といった微少角制御が行える駆動装置(ドライバ)が一般的になり、当社製品ではモータ軸1回転を50万分割する回転角制御も行えるようになっています。それ以前、フル/ハーフステップ駆動が主流であった頃は、回転角度を細かくするためにはモータ構造の工夫に頼るしかありませんでした。

 2相ステッピングモータの一般的なステップ角は1.8°で、これが2相のフルステップ駆動です。モータ軸1回転を200分割します。ハーフステップ駆動にするとステップ角は0.9°になり、1回転を400分割する事になります。
 同様に3相ではフルステップ駆動時のステップ角は1.2°となり、ハーフステップ駆動では0.6°です。
 駆動装置(ドライバ)にマイクロステップ駆動機能が無い場合、これ以上細かいステップ角駆動はできません。

 相数を増やせばステップ角をより細かくできるはずであるとして、5相ステッピングモータが考案されました。
 モータの構造は複雑になりましたが、フルステップ駆動時のステップ角が0.72°となりハーフステップ駆動では0.36°の制御ができるようになりました。
 では更に10相とか20相にすればもっと細かいステップ角が得られるわけですが、構造的に複雑となり生産が難しくなる等労多くして益少なく汎用品にはなっていません。
 なお2・3・5相共にロータの歯数は50が一般的ですが、ロータ歯数を100にしたものがあり、フル/ハーフステップ角はそれぞれ前述の半分と細かくなります。こちらも加工生産がより難しくなり、主流ではありません。

 さて5相ステッピングモータですが、下記の図33に示すコイル結線方法で世に出ました。スタンダード結線と呼ばれています。

5相 スタンダード結線
「図33」

 このモータのリード線は10本です。詳しい説明は別の機会に致しますが、10本リードのステッピングモータを駆動させるには、リード線1本について2個合計で20個の制御回路が駆動装置側に必要になります。

 2相で最大8個、3相で最大6個の制御回路でしたので、飛躍的に多くなってしまいました。 

 そこで図34・35・36のようなコイル結線方法が考案され、現在に至っています。図の順に、ペンタゴン結線・スター結線・新ペンタゴン結線と呼ばれています。

5相 ペンタゴン結線
「図34」

  5相 スター結線
「図35」

5相 新ペンタゴン結線
「図36」


 いずれもリード線が5本に減り、制御回路も10個になりました。

 それぞれコイルへの励磁パターンは異なりますが、フルステップ角0.72°で動作する事に違いはありません。

5相 スタンダード結線
「図37」

 図37は、図33スタンダード結線をモータの構造に合わせて書き換えたものです。
 どの端子とどの端子をつなぎ合わせたらペンタゴンやスターや新ペンタゴンになるのか、線を入れてみて下さい。(mt)


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<14 メールマガジン:2011年8月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(14) ■

 「ステータ磁極誘導子とロータ小歯の磁力バランス(1)」

 前号までで、ステッピングモータの構造についての説明は一段落しました。
続いてこのステッピングモータを駆動させるドライバの話へと進みますがその前に、“ステッピングモータはどのように動くのか止まるのか”を、モータ内でどのように磁気が働いているのかを見る事で実感して頂きたいと思います。

 ドライバの説明への橋渡しとして、4回くらいの予定でお話します。

 ステータ磁極誘導子とロータ小歯とが、互いの磁力で押したり引いたりしてステッピングモータは回転し、あるいは停止すると説明してきました。つまり互いの磁力のバランスが取れる方向に回転し、バランスを維持できるところで停止しているわけです。

 今回を含め“磁力バランス”の説明は図解が中心となりますが、一つだけ次の法則を覚えて下さい。

 [磁極間に働く力(F)は、磁極それぞれの磁力(m)に比例する]

 [磁極間に働く力(F)は、距離(r)の二乗に反比例する]

 F∝(m1×m2)÷(r×r)  /* ∝は比例記号 */

 磁気に関するクーロンの法則です。

 磁極間とはここではステータ誘導子とロータ小歯になり、m1とm2はそれぞれの発生磁力を示します。

 発生磁力の強弱により押したり引いたりする力は大小し[比例]、距離が近づく(離れる)ほど磁極間磁力は大きく(小さく)なります[反比例]。距離の二乗に反比例ですから、離れれば離れるほど磁極間磁力はどんどん小さくなります。

さて“磁力バランス”の実感ですが、先ずはロータが停止している状態です。

下記の図38は、2相ステッピングモータが励磁された状態を示しています。
各コイルが励磁され、その磁力でロータは停止しています。

「図38」

 なおこの励磁ではA相がS極に、B相がN極になっています。A相1-1に対向するA相1-2が同じS極で、機械位置が±90°にあるA相2-1と2-2はN極になっています。そうなるようにコイルが巻かれています。
(2月号図16参照)
「図16」

B相も同様です。

 図39は、図38のステータ磁極部分の拡大です。ステータ誘導子とロータ小歯が、少しずつズレています。対向しているところは、どこにもありません。各コイルが励磁されロータ小歯との磁力バランスが取れると、このズレた状態になります。

「図39」

このズレが「回転/停止」、ポイントです。

 ロータ小歯の、赤はN極で青はS極です。ステータ誘導子に一番近いロータ歯は、N極でしょうかS極でしょうか。

 クーロンの法則により一番近い磁極間磁力が一番大きいので、A相1-1ではS極に励磁されたステータ誘導子とN極ロータ小歯の引き合う力が一番であり、矢印で示したCW方向の回転力となっている事が判ります。

 図38でロータが停止している状態と言いましたが、A相1-1ではCW方向の力が発生しています。CWに回転しないのはなぜでしょう?

 隣のB相1-1では、一番強く働いている磁力の方向はどうなっているでしょうか。

 次回で詳しく調べてみる事に致します。お付き合い下さい。(mt)


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<15 メールマガジン:2011年9月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(15) ■

「ステータ磁極誘導子とロータ小歯の磁力バランス(2)」

 ステッピングモータの回転/停止について“モータ内でどのように磁気が働いているのかを見る”の続きです。
 モータ内の事を知らなくてもステッピングモータを動作させる事はできますが、知っておいて頂くと特性をより良く引き出せる事に繋がりお得です。

 さて先月号の図38・39で、停止しているステッピングモータのA相1-1ではCW方向の力が発生していることを示しました。CWに力が発生していますが、モータは停止状態です。“磁力のバランス”で停止しているのですから、どこかに反対向きの力が発生していると考えられます。
 となりのB相1-1を、見てみます。一番強く働いている磁力の方向はどうなっているでしょうか。
 N極に励磁されたステータ誘導子とS極ロータ小歯の引き合う力が一番であり、CCW方向の回転力が生じています。
下記のの図40の通りです。

「図40」

 CWとCCW方向の力の拮抗したバランスで、モータは停止している事が窺えます。
 モータ全体では、どうなっているでしょうか。図41をご覧下さい。

「図41」

 A相の4磁極はCW、B相の4磁極はCCW方向の力が発生しており、全体で磁力方向のバランスが取れモータ軸は停止しています。
 この拮抗する力のバランスが相励磁の切り替えで、すべてCWあるいはCCW方向への力となった時、その方向にモータ軸が回転します。
そして回転した先でまたCWとCCWの力が拮抗する状態となり停止します。
 これがステッピングモータの回転であり、停止の原理です。
 回転し停止する図解は、次号にて行う予定です。

 このようにステータスの磁極誘導子とロータ小歯とのズレが、ステッピングモータの動作を決定づけています。
 ステッピングモータの動作の最大特徴は、回転と停止です。
それがこのズレによって生まれます。
 “停止”とは、ただ停まっているだけでなく、現在の位置を保持して回転しない状態です。そうでないとステッピングモータとは言えません。
 電動モータは全て磁力バランスで回転していますが、誘導モータは回転方向に引く力のみで回転し、意図した位置に停止できません。
つまり通電を止めれば停止しますが、コイルは磁力を発生しませんから停まった位置に留まっている事はできません。
 ステッピングモータは、CWとCCWに同等な磁力が発生している事でバランスが取れ、CWへもCCWへも回転せず停止する事ができるわけです。
(mt)


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<16 メールマガジン:2011年10月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(16) ■
「ステータ磁極誘導子とロータ小歯の磁力バランス(3)」

 前月号では、磁極誘導子とロータ小歯とにCW・CCWの両方向の力が発生し、相殺された磁力のバランスでモータ軸が停止していると説明しました。(前月号図40・41)

 これらの図では磁極誘導子とロータ小歯との磁力方向を、磁極誘導子P3とロータ小歯N1のように直近のものだけで示しました。が、磁力は直近のものだけに発生しているわけではありません。

下記、図42にA相1-1とロータ小歯の磁力発生状態を示しました。

「図42」

 赤矢印線は磁極に引かれる磁力線を、青矢印線は反対に押される磁力線です。同じ引かれる磁力線でも、CW・CCW両方向があります。示した磁力線はこれでも一部で、ロータ小歯1個はモータ内の磁極誘導子全てと引いたり押したりする関係にあります。

 図42の磁力線をCWとCCW方向に分け、それぞれの磁力を求め合算すると、S極に励磁されたA相1-1ではCW方向の力が優勢となります。ここでは計算はしませんが、図示した矢印線が短いほど磁力が大きいというクーロンの法則を思い出して下さい。従って直近の磁極誘導子とロータ小歯の磁力線のみをイメージする事で、ロータに生じる回転力方向を示す事にします。

 さてロータが停止している状態の説明が続きましたが、ステッピングモータには回ってもらわないといけません。
 図解した方が判りやすいので、図43-0〜-5に、CWに1.8°回転する様子を示しました。 


【図43-0】
 前月号の図40に同じで、ロータは停止状態です。
 赤く塗りつぶしたロータ小歯に注目して下さい。

【図43-1】
 B相1-1の励磁が、S極に変わりました。
 B相1-1磁極誘導子の直近のロータ小歯との磁力方向が変わり、
A相1-1と共にCW方向に磁力が働き回転を始めます。

【図43-2】
 CWへ0.45°回転したところです。
 磁極誘導子とロータ小歯との磁力が大きさが変化しました。
 まだCW方向への回転力があります。

【図43-3】
 更に0.45°回転し、最初から0.9°の所に来ました。
 直近のロータが入れ替わり始め、磁極誘導子とロータ小歯との磁力が大きさ方向共に変化しました。
 A相1-1ではCCW方向への回転力に変わってきましたが、まだCW方向への力が優位です。 

【図43-4】
 更に回転し、1.35°に来ました。
 A相1-1のCCW方向の力が大きくなり、ブレーキが掛かり始めました。

【図43-5】
 更に回転し、1.8°に来ました。2相ステッピングモータのフルステップ一つ分回転しました。
 二つの相の発生磁力が反対向きになり、バランスが保たれロータは停止します。それぞれの相の発生磁力方向は、図43-0とは反対向きになっています。

 では更にCWへ回転させるにはあるいはCCWに戻すには、相の励磁をどうすればいいでしょうか。
 このようにフルステップ角度を正確に刻んでCWへもCCWへも回転させ、止めたい角度できちんと止めるのが、相コイルの電流方向を切り替える相励磁パターンです。(mt)


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<17 メールマガジン:2011年11月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(17) ■
「ステータ磁極誘導子とロータ小歯の磁力バランス(4)」

 先月号の図43-0〜-5で、ステータ磁極の励磁が変わるとロータとの間の磁力方向が変わり、バランスが安定する方へ回転する事を示しました。
 この動きをアニメーションにして欲しいとのご要望が寄せられましたので、動画4を作りました。

「動画4」

ステッピングモータ内部の動きを、実感して頂けます。

 動画4では、ロータがCWに3.6°(2相フルステップの2ステップ分)回転します。

 “連続自動再生”と“手動再生”を用意しました。

 手動再生では「次へ」をクリックする毎に0.15°回転する画像が、No.0からNo.26まであります。
 赤く塗りつぶしたロ−タ小歯の動きにご注目下さい。
 ステータ磁極それぞれの直近のロータ小歯に働く磁力の方向を、矢印で示してあります。

【No.0・1】
 磁力の方向はCW/CCWに同じで、磁力バランスが保たれ停止しています。

 B相1-1の励磁がN極からS極に変わり、CWへの磁力のみになります。

【No.2〜7】
 ロータはCWへ回転を始めます。
 A相1-1とロータ小歯に働く磁力の方向が徐々にCCWに変わっていき、0.9°で回転する力はゼロになります。

【No.8〜12】
 A相1-1とロータ小歯に働く磁力の方向は逆転し、CCWの方が強くなっていきます。

【No.13・14】
 1.8°でA相1-1とB相1-1との磁力が逆方向で同じになり、ロータは停止します。

 次ぎにA相1-1の励磁がS極からN極に変わり、CWへ回転を始めます。

【No.15〜26】
 前述と同じ動きですが、今度はB相1-1とロータ小歯とで磁力方向が逆転していきます。

 このように相の励磁が切り替わる事で、ロータが回転したり停止したりします。
 言い換えると切り替わった励磁により、磁力バランスが保たれる“指令された位置へ止まろうと進む”動きとなります。励磁が切り替わらなくなったら、“止まっているまま”になります。
 つまり指令された位置に“止まろうと進む”あるいは”止まっているまま“が、ステッピングモータの動きです。
 止まることが得意なステッピングモータなのです。(mt)


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<18 メールマガジン:2011年12月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(18) ■
「ステッピングモータはデジタル?―雑談タイム1―」

 前回まで、ステッピングモータの構造からモータ内の磁気バランスについてお話ししてきました。
 ステッピングモータの構造にまつわる話は一段落します。止まる事を得意とするステッピングモータの姿を、少しでも実感して頂けたら幸いです。
 本コラムは営業マンやステッピングモータとは縁遠い方々に、ステッピングモータを知ってファンになって頂く事を目的としております。
技術者の皆さんには物足りない内容、のんびりした話の展開かとは思います。お許し下さい。
 さて次回新年1月号からコラムは、ステピンモータを動かすドライバ[driver]の話へと進みます。
 ステッピングモータを止める・動かす、つまり駆動する(drive)ための装置を説明していきます。
 が、今月号は雑談を一つさせて頂きますので、いつもより気軽にお読み下さい。
 
 今回サブタイトルを「ステッピングモータはデジタル?」としました。
ステッピングモータはデジタルである、と筆者は考えています。
デジタル制御に適したモータであると。
 ではステッピングモータはアナログとは無縁かというと、そうではありません。駆動させる源は電流であり、モータの動きに合わせ電流値はアナログ状にアップダウンし調整されています。
 デジタル(digital)はアナログ(analog)と対立しているのではなく、アナログの特殊な姿と考えておいた方が良いと思っています。そもそもデジタルとは?アナログとは?を明確にしておかなければならないのですが、ここでは制御について次のように理解して頂けたらと思います。

 0Vから5Vまでの電圧制御を、例に取ります。
 アナログ制御の場合は、ボリュームを回すと出力電圧が上下するイメージです。0Vから5Vの間を直線的に上下します。
 デジタル制御の場合制御分解能が1V毎ならば、0・1・2・3・4・5Vの6通りの出力電圧となり、5ステップの階段状に上下するイメージです。
制御分解能をより細かくすればステップ数はより多くなり、制御分解能無限大がアナログ制御に等しくなります。つまりデジタルはアナログの特殊な姿と言えるのがお判り頂けるでしょう。
 アナログ制御の場合はボリュームの回し方で2.345Vといった任意な電圧に制御できますが、ボリューム角度と電圧に相関関係はあるものの電圧計を見て確認する必要があります。
 デジタル制御では出力電圧は任意にできませんが、制御指令に対応した電圧は常に同じです。電圧計を用いなくても、電圧は定まります。

 ではステッピングモータです。
 ステッピングモータの回転角は予め、2相フルステップなら1.8°というように、決まった角度になっています。制御装置からパルスを3つ送れば、ステッピングモータは3ステップ回転します。角度計測計を用いなくても、必ず指令位置に行きます。このパルスは、オンとオフとで構成された1ビットのデジタル信号です。
 また制御分解能をより細かくすれば、2.345°といったフルステップ角以外の角度に制御できるようになります。
 前述の電圧のデジタル制御と、同じに見えませんか。
 
 乱暴な話の展開になりましたが、今回はこれで終わりです。
このステッピングモータとデジタルのお話しは、制御誤差・許容誤差の捉え方といった“制御思想”につながっていきます。
 それはどういう事か?
 なにやら大袈裟な成り行きになりましたが、続きはまたの雑談タイムにお話しようと思います。
 
 本年中はお付き合い下さいましてありがとうございました。
 来年もよろしくお願い申し上げます。
 良い年になりますようお祈り申し上げます。(mt)


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<19 メールマガジン:2012年01月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(19) 
「ステッピングモータを動作させる装置―概観―」

 あけましておめでとうございます。
 今年一年が良い年になりますよう、お祈り申し上げます。

 新年を迎えて本コラムは、ステッピングモータを動作させる装置の説明に入ります。
 ステッピングモータに限らず電動モータは電源がなければ動きませんが、電源だけでは動きません。
 DCブラシモータ(2010年10月号掲載図)は乾電池を繋ぐだけで回りますが、そのままでは回転を止める事はできません。

/***本コラムのバックナンバーは、弊社ホームページ
 http://www.mycom-japan.co.jp/
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 止める事ができないシステムは、制御されているとは言えません。
 どんなシステムでも何らかの駆動装置が必要になります。
 モータを止めるために電源を切って良い場合、スイッチを取り付ければ制御されているシステムになります。この場合、スイッチが制御装置になります。
 「電源とそれをON/OFFするスイッチ」、これが一番簡単なモータ制御装置です。が、これだけでは玩具のロボットでも動かせません。
 モータの仕事には“動く/止まる”だけでなく、“速度を変える”、“決まった回転量を動く”、“他のモータと助け合う”があります。
 電車にはそれの、部品実装ロボットにはそれの、それぞれ仕事に最適な仕様を搭載した制御装置が必要です。

 下記、図44にステッピングモータの制御装置の概観図を示しました。

「図44」

 かなり大雑把な図ですが、機械に使われているモータ一個一個にこれら制御装置が取り付けられています。
 速度調整・電力(電流)調整・動作時間(距離)調整・・・用途によっていろいろな機能を持たせる、それが制御装置です。

 図44では「制御装置」と「駆動装置」とを区別して図示しましたが、厳密に定義が分けられてはいないようです。本コラムではソフトウェアを含むコントローラを制御装置、ドライバを駆動装置として扱う事にします。
 次号から順に説明してまいりますが、先ずはステッピングモータに直接繋がっている「駆動する(drive)装置」としてのドライバ(driver)から説明していきます。

本年もよろしくお願い申し上げます。(mt)


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<20 メールマガジン:2012年02月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(20) 
「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(1)」

 先月号ではステッピングモータを動作させる装置として、制御装置と駆動装置を大まかに説明しました。
 今月号からはステッピングモータに直接つながりモータを駆動する装置、ドライバの説明を始めます。

 ステッピングモータは、ステッピングモータ用のドライバが無いと動きません。
 1個のモータに1台のドライバが、セットになります。全く同じに動作させる複数のモータである場合、1台のドライバで複数のモータを駆動するケースもあるにはありますが、それは希で、ほとんどが1対1のセット構成を取っています。これはステッピングモータに限った事ではありません。

 さてドライバはステッピングモータを動かすわけですが、その役割は大きく分けると次の二つです。
 (1) モータに電力を供給する
 (2) モータの回転内容を制御する

 物を運んだり(搬送)走行/停止させたり(位置決め)するには、それに必要充分な力が必要です。その力をモータの回転力から得るのですが、源はモータに供給される電力(W)です。
 下図をご覧下さい。

「図45 ドライバの内部構成」

 図45は定電流駆動型ドライバの構成を示しています。定電圧駆動型という構成もあり、モータの使い方によって使い分けられています。
モータは2相ステッピングモータです。
 以下いろいろな用語が羅列されますが、詳しい説明は後回しにして、先ずは全体像を掴んでください。

/***本コラムのバックナンバーをご参照頂けると、判りやすくなるかと思います。
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 赤の太線で繋がった所が、モータに電力を供給する回路です。
 「電源回路」は繋がれる電源がAC(交流)かDC(直流)によって構成は異なりますが、ヒューズ・ノイズフィルター・整流回路・レギュレータ(電圧安定化や降圧)・コンバータ(AC/DC変換:AC電源時)等で構成されています。モータへの電力供給を安定化する回路です。ドライバ内の各部品の電源(3〜12V)も、ここで作っています。
 次の「定電流駆動回路」はチョッパー回路とも呼ばれ、モータへの電流を最適にする役目です。動作中を含めモータコイルに流れる電流をリアルタイムに観測し、モータ駆動電力を最適にする回路です。
 「モータ各相励磁切替回路」はドライバの出力部で、パワーMOSFET(Power Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)で構成されています。パワーMOSFETは電界効果トランジスタ(FET)の一種で、大電流に対応する素子です。このFETの出力部がモータの各コイルに接続され、電力を送ったり切ったりしてコイルの励磁をON/OFF(相励磁)します。

 この電力供給ラインには、個々の部品が微弱電流で動作するマイコンボードなどと違って、数百mA〜数十Aの電流が流れます。従ってこのラインを構成する部品は、耐電圧や電流容量の大きな物が使われています。

 かなり大まかな説明になりましたが、以上が“(1)モータに電力を供給する”の概要です。
 モータに電力を供給すればトルクを出力(停止トルク)しますが、回転はしません。
回転させるためにはパワーMOSFETをON/OFFさせるスイッチング回路が必要です。
 スイッチングを担うのが、「相分配回路」です。
 次回は“(2)モータの回転内容を制御する”に移ります。(mt)


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<21 メールマガジン:2012年03月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(21) 
「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(2)」

ドライバの役割を
 (1)モータに電力を供給する
 (2)モータの回転内容を制御する
の大きく2つのブロックに分け、前回は“(1)モータに電力を供給する”ブロックを概観しました。
 今号は“(2)モータの回転内容を制御する”ブロックについて説明します。

 先月号の図45を、もう一度ご覧下さい。

「図45 ドライバの内部構成」

 “(2)モータの回転内容を制御する”は、「相分配回路」「モータ各相励磁切替回路」が担当します。
 モータ側から順に回路を見て行くことにします。
 図45のステッピングモータは2相バイポーラ型を例としていますのでコイルの各リード線は(4本)、「モータ各相励磁切替回路」の端子A・/A・B・/Bに繋がっています。

下記、図46をご覧下さい。

「図46」

 これら端子A・/A・B・/B各部を、ここでは単純な機械スイッチと考えることにします。各部に2個のスイッチ、合計8個で構成されています。
 モータを動作させるにはコイルに電流を「順方向に」「逆方向に」流す「流さない」状態に切り替える、と説明してきました。この切替動作がA・/A・B・/B各部のスイッチングで行われます。

/***/
 ちなみに/Aや/Bに‘/’記号を付けていますがこれは便宜的な表し方で、図46に示すように‘アップバー’にするのが正しいのかも知れません。
‘アップバー’は論理式や回路記号では<反転><否定>を表す符合です。
 従って端子/Aは、コイルの一方に繋がっている端子Aの反対側に位置している事を示しています。
/***/ 

 端子A・/A・B・/Bの合計8個のスイッチを介して、コイルは定電流駆動回路からの電源+/−に繋がります。スイッチ(SW)の+側がONになると、コイルへ電流が入っていきます。−側がONになるとコイルから電流が出てき、+も−もOFFならばコイルには電流は流れず励磁OFFの状態になります。
 このようにしてコイルへ電流を「順方向に(+側から)」「逆方向に(−側へ)」流す、「流さない」が実現されます。
 ちなみに各端子部で対になっているスイッチの+側と−側を、同時にONにしては絶対にいけません。この“同時ON禁止”はドライバ設計上の大原則です。同時ONすると電源+/−が短絡(ショート)して、ヒューズが切れたりスイッチが破損します。

 さてこれらスイッチをON/OFFするのが相分配回路からの励磁切替信号で、各スイッチに対応した線数の信号線です。図46の2相バイポーラ型では8本です。
 励磁切替信号と呼ぶのは、コイルの励磁をON/OFF(励磁パターン)する順序(励磁シーケンス)は決まっており、それに従いスイッチをON/OFFするからです。
 またコイルを“相”とも言いますが、これら相に励磁パターンを割り振っていく役割を担っているので相分配回路と呼ばれます。

 励磁パターンを出力するのが相分配回路ですが、励磁シーケンスを進める役目はコントローラから来るパルス信号(1本)です。
 ステッピングモータはパルスモータとも呼ばれ、パルス信号(方形波1本)のパルス数にモータ回転ステップ数が対応しています。でもモータのリード線は1本ではなく必ず2本以上の複数で、対応していると言われても<どうやって?>と戸惑ってしまいます。
 1本のパルス信号を受けたドライバ内部で励磁パターンの生成と切り替わりが行われ、それが複数の励磁切替信号に出力されモータへの電力供給スイッチをON/OFFしているわけです。

 以上が“(2)モータの回転内容を制御する”ブロックの動作の流れです。
 次号からはもう少し詳しく動作の流れを見ていく予定です。(mt)


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<22 メールマガジン:2012年04月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(22) 
「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(3)」

 今号では、ドライバの回路構成を少し詳しく見ていく事にします。
 図47・48を、ご覧下さい。

「図47 INS50シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

「図48 INS500シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

 先月号までのブロック図より、ぐっと詳細になりました。ドライバ設計者でなければブラックボックスとしている回路構成内部の事なので、営業マンの方々には見るのが辛いとお感じになるかも知れません。
 が、今号では少し回路内部に触れてみる機会として、どうかしばらくお付き合い下さい。回路図に比べれば、かなり簡略化されているブロック図です。
 今月号よりしばらく回路の説明が、続きます。回路の動作説明より、ステッピングモータの動きに回路がどう係わっているのかを重点に説明するように致します。営業マン各位の参考になれば幸いです。
 技術営業を担う弊社市場化推進室スタッフが、技術資料としているブロック図です。

 さて図47・48ですが、図中に図45(2月号掲載)の各ブロックに対応する部分を、赤線の楕円で示しました。
 図47は、弊社製品のINS50(AC電源タイプ)の回路ブロック図です。
 図48は、同INS500(DC電源タイプ)のものです。

 まず「電源回路」を見ます。
 電源タイプがACとDCとでは、大きく違っています。図47と48を、見比べて下さい。違う箇所が、お判りになりますか。
 電源端子に続く「ヒューズ」までは同じですが、AC電源タイプは「フィルター」「整流回路」と続き、DC電源タイプにはそれがありません。大きな違いの一つです。AC電源タイプではここで、交流を直流にしています。DC電源タイプは元々DC電源が供給されますので、「整流回路」が無いわけです。
 AC100Vが供給されれば直流約140V、AC200Vならば直流約280Vに変換され、モータ駆動電力となります。
 つまりAC電源タイプのドライバも、モータ駆動電力やドライバ回路自体は直流で動作しています。

 モータ駆動電力が直流である故に、ステッピングモータの特徴である“止まる事を得意とする”が言えるのです。
 それはどうしてか、比較として交流モータのドライバを見てみます。
 交流モータはコイルに交流を流す事で回転しますが、供給されているAC電源をそのまま使っているわけではありません。そうだとしたら、西日本では60Hz、東日本では50Hzで周波数が固定されてしまい、回転速度を可変することができません。
 交流モータのドライバでは、供給されたAC電源を一旦直流に変換します。ここまではステッピンモータドライバと同じです。次ぎに直流をインバータ回路で交流に再変換します。この再変換時に周波数を変えモータ回転速度を上げたり下げたり制御しています。
 では交流モータを“止める”には、どうするのでしょうか。周波数を“止め”れば、つまり周波数ゼロにすればモータ回転は止まります。
 周波数ゼロの交流を、思い浮かべて下さい。何らかの電圧を持つ交流は、何らかの周波数を持ちます。周波数ゼロと言う事は電圧ゼロ、従ってモータに電力が供給されていない状態になります。
 交流モータが止まるのは電力が供給されていない時で、モータフリーの状態です。それは“動けないから止まっている”のであって、能動的に止まっているわけではありません。故にこのままでは、位置決め制御には使えないわけです。

 直流には周波数という性質は無く、ステッピンモータの速度制御は交流電力の周波数で行われてはいないので、止めた時も電力供給は維持されモータフリーにはなりません。

 今月号の字数がつきました。来月号へと説明が続きます。(mt)

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<23 メールマガジン:2012年05月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(23) 
「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(4)」

 先月号では「交流モータでは位置決めはできない」と説明しました。
 この交流モータをより正確に言い表すと、回転する=電力供給有り・停止する=電力供給無し、つまり“滑りモータ”となります。電力を供給すれば回転してしまう、供給を止めれば停止してしまうモータです。

コラムNo.4(2010年10月号)記載の動画2を用いて、説明致します。
これは直流のブラシモータの概念図ですが、滑りモータの原理を表しています。

「動画2」

 コイルに電力を供給すればモータのロータは回ります。ロータが回れば、その軸に取り付けてあるブラシ(スイッチ)が機械的にON/OFFされ、コイルの励磁の有無と磁力方向が変わります。磁力方向が変われば、ロータが回転を続けます。この動作が互いに関連しているので、電力供給=モータ回転開始となります。このモータを止めるには、電力をOFFするしかありません。
 DCブラシレスモータは、ブラシに代わる電子素子が搭載されていますが、動作原理はブラシ付きと同じです。
 交流モータは、繰り返しになりますが、交流を任意の直流電圧で止めれば良いではないかとなりますが現実的ではありません。

 しかし位置決め制御に用いられている“滑りモータ”にサーボモータがあります。ステッピングモータのライバルです。
 サーボモータとは、位置決めできない“滑りモータ”にエンコーダを付けて位置決めできるようにしたもの、と言えます。つまりエンコーダからの機械的な位置情報をドライバが得て、ズレないように常にCW/CCWに動き続けているモータです。ゲイン調整という作業を適正に行わないとハンチング現象を起こし、CW/CCWへと細かく揺れ動き暴走状態となります。
 が、最近のサーボモータはゲイン自動調整や応答性が向上し、使い勝手は良くなってきているようです。
 ステッピングモータ・サーボモータには、それぞれ長所短所があります。
使用するアクチュエータに合わせて、ステッピングかサーボかをユーザ様は選択なさっています。

 電力の供給の有無から”滑りモータ”の位置決め特性を見てみました。
 次号では同観点で、位置決めを得意とするステッピングモータについて説明致します。(mt)

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<24 メールマガジン:2012年06月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(24) 
「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(5)」

 「交流モータでは位置決めできないがエンコーダを組み合わせればサーボモータとして位置決めできる」と、先月号は終わりました。
 サーボモータによる位置決め制御を実体に即して言い表すと、「エンコーダ値のフィードバックにより位置決め目標に向かって常に動き続けている」となります。

 それでは、ステッピングモータです。
 ステッピングモータは、目標位置に到達したら”止まり”ます。
そしてエンコーダは不要です。フィードバック信号無しで、位置決めします。
 それは常に変化する交流ではなく、直流がモータに印加されるからです。
 簡単に言うと、交流電圧は常に”動いている”であり、直流電圧は”止まっている”です。

 ステッピングモータは、各コイルの励磁の有無と電流方向の切替で回ります。このコイル励磁の切り替わりタイミングの長短でモータ回転速が制御されます。
 つまり直流のON/OFFは交流の一種と言えるので、ON/OFFタイミング変化は周波数変化と同じになるとも言えます。故にステッピングモータは、回転=”動く”ことができるわけです。
 ステッピングモータの励磁パターンでは必ずどれかのコイルが励磁ONされているので、コイルには電力(直流)は供給され続けます。よってモータフリーになる事はなく、トルクは維持され止めたいところに止まり続ける事ができます。

 “滑りモータ”ではないステッピングモータは、回転/停止に関わらずモータに電力が供給されトルク出力を保持しています。
 コラムNo.17(2011年11月号)記載の動画4を用いて、説明致します。

「動画4」

 0番画面は、A相B相の磁力が同等でロータとの磁気バランスが釣り合って止まっている状態です。コイルは直流で励磁されモータにはトルク出力があります。
 「再生」して下さい。
 13番画面は1.8°進んだ位置で、フルステップの1ステップ目です。
ここでもA相B相の磁力が同等で前述同様な状態です。更に進めて26番画面も同じで、2ステップ目です。
 それぞれのフルステップ位置で励磁シーケンスを止めれば、コイルは励磁されたままなので、その位置にロータは停止しかつトルクを保持します。
 このようにコイル励磁の有無と方向の切り替わりに合わせロータが回転しますが、電力供給は続くのでトルクと位置決めは保証されます。

 ドライバ構造の説明から脱線傾向になりました。
 次号からドライバ回路をブロック毎に順に説明していきます。(mt)

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<25 メールマガジン:2012年07月号>


■ ステッピングモータをお使い頂くために(24) 
「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(6)」

 5・6月号ではステッピングドライバの回路構成の話から若干脱線しましたが、今月号では戻ります。
 4月号掲載の図47・48を使い説明を再開します。

「図47 INS50シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

「図48 INS500シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

 図47はAC(交流)電源タイプ、図48はDC(直流)電源タイプの回路構成ブロック図です。
 各タイプの回路構成の細部に違いがありますが、基本は同じです。

 先ずは、電源回路。
 図の左上の端子から、電源が供給されています。
 この電源回路はよく見かける回路構成で、ステッピングモータ制御専用ではありません。

 保護回路は、許容を越えた電流が流れた時にドライバを発火や破損から守ります。ヒューズを用いるのが、安価で確実です。
 ACタイプは電源として商用電源(電力会社のもの)を使うので、ノイズ混入に備える必要があります。商用電源は建屋内で同系統電源線に他の機器が繋がっていたりしますから、いろいろなノイズが混じります。
そのためにフィルターは必需です。DC電源タイプは、安定化電源装置から電源が供給されているので、フィルターを不要にもできます。
ノイズは制御信号を乱すだけではなく高電圧のものもあって部品を壊しますので、要注意です。

 AC電源タイプでは交流を直流に変換する整流回路があり、ブリッジダイオードで構成されています。ここで+−双方向の交流が+側のみの山の連続状の交流に変換されます。
 山の連続状の交流は、後段の平滑回路=コンデンサの充電放電により直流に平滑化されます。

 またまたここで、少し脱線します。
 整流・平滑回路で交流をどのようにして直流に変えるのか、その原理を是非ともお知り頂きたいと思います。整流・平滑回路は電気設計者ならイロハのイなのですが、電子回路設計者でも原理は知らないと言う方もおられるやも知れません。
 図49を、ご覧下さい。

「図49-1」
「図49-2」
「図49-3」

 図49-1は、半波整流回路です。黒く塗りつぶされた三角形はダイオードの回路記号です。ダイオードは、朱色の矢印で示した方向にしか電流を通しません。
 入力端子に赤と青線で示した交流が入力されると、出力には赤線部のみが現れます。青線部はダイオードに対して逆電圧になるので、出力には現れません。
 次の図49-2は、全波整流回路です。ダイオードが4個になりました。
ブリッジダイオードです。
 交流の赤線部と青線部は、それぞれのダイオードの向きに制御され、どちらも出力の+側へと流れていきます。サイン波状の入力電圧が、出力では山の連続に整流されます。

 全波整流だけでは、まだ直流に変わったとは言えません。
 コンデンサを追加したのが図49-3の整流平滑回路です。
 ブリッジダイオードからの山の連続波形に対してコンデンサは、山側の電圧の時充電され谷側の時放電します。この動作が連続的に行われるので、出力は平滑され直流になります。
 しかしこれでもまだ直流電源として安定しているとは言えません。
どうすれば良いでしょうか。脱線タイムの機会があれば、話題に致します。
(mt)

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<26 メールマガジン:2012年08月号>

■ ステッピングモータをお使い頂くために(26) 
「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(7)」

 電源回路の説明を、続けます。
 今月号も引き続き4月号掲載の図47・48を用います。

「図47 INS50シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

「図48 INS500シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

 図47の赤丸で囲った電源回路の右上側に、突入電流防止回路が置かれています。
 突入電流とは、電源投入の瞬間に回路に流れ込む過大な電流です。
 電源OFF時は、回路内のコンデンサは放電しきって空の状態になっています。そこへ電源が投入されるとコンデンサを充電するために一挙に電流が回路へと流れ込みます。この突入電流は大電流のため、
突入電流防止回路がなければほぼ確実に回路は壊れます。
 この回路は抵抗とトライアック(スイッチのような物)で構成され、過電流の時には抵抗として働き、通常時には短絡(抵抗のない導通状態)回路になります。
 突入電流防止回路はモータ制御に関与しない回路ですが、装置を守るための無くてはならないものです。

 その他、ドライバ内部で使用するためのDC電源回路を併せ持っています。外部I/F(フォトカプラやラインレシーバ/ドライバ等)やロジックデバイス(相分配ICやロジックIC)用の電源回路が付随します。12V・8V・5V・3.3V等必要に応じて、トランスやレギュレータで電圧変換し供給します。

 電源回路についての説明は、これで終わりです。次号から定電流駆動回路の説明へと移りますが、この回路の主要部であるPWM回路について予習しておきたいと思います。
 PWMとはPulse Width Modulationの略で、パルス(P)の幅(W)によって出力を変調(M)する制御方法の一つです。シンセサイザーや音源、電源回路に用いられています。
 図47・48の定電流駆動回路内に朱色の星印を付けたFETで、PWM制御を行っています。

 ではPWMにより何をどのように制御しているのでしょうか。
 ドライバ回路では、電源回路から供給される電力を後段回路へ適正な値になるように大きくしたり小さくしたりしています。
 PWM制御回路のFETを、スイッチと考えて下さい。スイッチONの時は電力が供給され、OFFの時は遮断されます。このスイッチON/OFFの幅(W)の比率より、後段回路への電力供給量が調整されます。

下図をご覧下さい。



 図50-1はPWM回路をスイッチに模し、電源から電圧Vpが負荷に供給されている構成です。
 スイッチがONされる周期tは予め決めておき、これをPWM周期と言います。
 スイッチをOFFするタイミングを可変することでON幅が変わり、負荷両端ABには図50-2のようなパルス波形が現れます。
 これだけでは電圧Vpのパルスが生成されるだけで、PWM制御にはなっていません。
 そこで図50-3のようにスイッチと負荷間に、コイルとコンデンサを入れます。平滑(積分)回路です。
 平滑回路によってパルスON幅の割合に比例した電圧が、負荷両端に供給される事になります。
 パルスON/OFFがそれぞれ50%なら2/4Vpになり、ON幅が75%なら3/4Vpに制御されます。

 このPWM回路を使ってモータへの駆動電力を制御するのが、定電流駆動回路です。
 このスイッチをOFFするタイミングを決めるのは、モータ自身です。
 アナログ制御回路の絶妙なバランスが見て取れる回路です。(mt)

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<27 メールマガジン:2012年09月号>

「ブレイクタイム ---ステッピングドライバは進化する---」

 ドライバ回路の構成を説明してきましたが、話がだんだんミクロ的になってきましたので、少し息抜きとして、ステッピングモータドライバをこれまでと違った視点で眺めてみようと思います。
 ブレイクタイムに、お付き合い下さい。

 本コラムの基調は、「ステッピングモータを多くの方に使って頂く」です。
 位置決め制御分野は、止まる事を得意とするステッピングの活躍の場ではありますが、独壇場ではありません。
 サーボモータも、用いられています。
 ステッピングとサーボにはそれぞれ長短所があり、制御用途に合わせて選択されています。また機構設計エンジニアの好みも、大きく関係しているのかも知れません。

 サーボモータは、インダクションモータ+エンコーダで構成されたモータです。
インダクションモータは滑りモータなので「止まる」ことはできないのですが、エンコーダのフィードバックによって”止まっているようにできる”モータです。 変な言い回しになりましたが、インダクションモータであるが故に「止まる」事はできませんので、”ようにできる”と表現しました。

 サーボモータの位置決め制御方法を簡単に説明すると、
(1)指令位置情報がパルス列(パルス数)で指令装置からドライバに送られる
(2)ドライバは指令位置方向へモータを駆動する
(3)モータ軸に取り付けられたエンコーダから実際の移動量が指令装置にフィードバックされる
(4)指令装置で指令パルス数と実際の移動量の差(溜まりパルス)が無くなるようモータを回転させる

となります。指令値を追いかける(溜まりパルスの払い出し)という制御です。
 ここに「止まる」という制御シーケンスはありません。インダクションモータであるために、(4)でいう「一致」するように常にモータを回転させて”止まっているように”している方法です。

 ではステッピングモータではどうなのか。前述の(1)(2)は同じです。
(3)(4)に相当するシーケンスはありません。
 ステッピングモータは指令に対し即時に応答する動きをしますので溜まりパルスは存在せず、応答性の良さが信条です。
 長所と短所は表裏一体で、この応答性の良さがステッピングモータの最大短所である脱調現象に関係しています。脱調とは、指令位置と実際の移動量の差が管理できなくなった状態を言います。
 サーボモータには脱調はありませんが、偏差オーバーフローエラーやハンチングなど類似の現象があります。
 応答性の良いステッピングモータは一つのパルス指令に対して一つのステップを回転しますが、指令パルス列が早過ぎたりモータが過負荷になって物理的に回転できなくなった場合、指令に応答できなくなります。 問題は、応答できなかったパルス数を指令装置では把握できないことにあります。

 では、ステッピングモータにエンコーダを付けたらどうなるでしょう。
 弊社では、脱調しないステッピングモータ&ドライバとしてTSDシリーズをラインアップしました。
 進化するドライバの一つです。
 脱調させない機能を持つ事で、モータへの負荷変動へも柔軟に応答できるようになります。進んで行った先で過負荷になれば止まる事も戻る事もでき、負荷が解除されればまた進んで行きます。

 先月号のメールマガジン技研便りで紹介致しました
http://www.mycom-japan.co.jp/giken/201208/201208d.htm
に、TSD100ドライバとして動画等で性能を説明しています。
 AC電源仕様のTSD10もラインアップ間近です。
 サーボモータとの比較という観点で、改めて見て頂けると幸いです。(mt)

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<28 メールマガジン:2012年10月号>

「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(8)」

 先月号はブレイクタイムを頂きましたが、定電流駆動回路の説明を再開します。

 今月号も引き続き4月号掲載の図47・48を用います。

「図47 INS50シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

「図48 INS500シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリック

 定電流駆動回路の中に朱色★印がついた素子がFETで、モータへの電力を調整しています。
 定電流制御の要です。
 このFETからモータコイルへ電力が供給されますが、このFETを制御(ON/OFF)しているのはモータコイルから戻ってきた電力が「電流検出」回路を通る時の状態です。つまり”モータ自身が電力を調整”しています。
 このループになった制御系は、アナログ制御回路の絶妙なバランスが見て取れる回路です。

 では定電流駆動回路の動きを、概観致します。

(1) モータ停止の状態で電流値を、出力電流設定回路のボリュームにて定格に設定します。

 定電流制御は文字通り「モータへの電流が一定になるようにする」制御です。
 つまり負荷に対して必要なトルク=電流ではなく、あくまで一定の電流にします。
 これはステッピングモータの定電流制御の基本となるものなのですが、必要以上の電流が消費されるケースもあります。
不要な電流増加やモータ発熱の要因となります。

 只今好評発売中のドライバ「TSDシリーズ」は、必要なトルクを必要に応じ自動調整する機能を持っている省エネ・ドライバです。
 今月号の技研便りや弊社HPに紹介ページをご参照下さい。
 http://www.mycom-japan.co.jp/nss/tsd100/tsd100.htm

 さて定格電流に設定されたモータが回転を始めます。

(2) モータコイルへの電流がFETのON/OFFにより制御されて、モータ軸が回転します。
 モータ回転が早くなればなるほどコイルに電流が流れにくくなっていきます。

(3) このままではモータへの電流が小さくなって、発生トルクが低下します。

(4) この電流低下は、”電流検出” 回路で検知されます。
 定電流制御FETのスイッチングON幅(PWM)を長くし、(1)の定格電流値になるように調整されます。

(5) 更に高速になっていくと、ますますコイルに電流は流れにくくなります。
 PWMスイッチングを全ONしても定格電流に持って行く事が出来なくなります。
 図51を、ご覧下さい。
 横軸に速度、縦軸にトルクを示したトルクカーブ図で、低速から高速までのPWM幅の推移を示しました。

「図51」

(6) ステッピングモータの発生トルクが一定の速度以上になるとトルクが下がってくるのは、この特性によります。
 図51では、速度A付近から低下しています。

(7) 高速域でももっとトルクが必要であるなら、同じ定格電流でも電源電圧がより大きい機種で対応します。

 モータ回転が早くなるほど電流が流れにくくなるのは、コイルの抵抗が速度に比例して大きくなるからです。
 コイルの抵抗は交流抵抗と言い、誘導リアクタンスとも言います。
 誘導リアクタンスは、コイルに与えられる電流のON/OFF周波数に比例します。
 周波数が高く(回転速度が早く)なるほど誘導リアクタンス(交流抵抗)値は大きくなり、電流は流れにくくなるわけです。
 誘導リアクタンスの大きさを表す単位記号は「Ω」を用いますので、抵抗部品と同じでオームの法則に従っています。
抵抗部品と違うのは、電流のON/OFF周波数により動的に抵抗値が変化する所です。
 話は、次号へ続きます。(mt)

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<29 メールマガジン:2012年11月号>


「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(9)」

 先月号では、ステッピングモータドライバの定電流制御回路の基本動作を説明しました。
 その中で、定電流制御はモータへの駆動電流を常に一定にするのですが、モータが高速回転すると交流抵抗が増し駆動電流は低下すると説明しました。
 つまり高速域では、モータの発生トルクはだんだん小さくなっていきます。
 このトルク低下はステッピングモータに限った特性ではありません。
 高速域でもっとトルクがほしい場合、通常はそれに見合うモータを選定し直す事になります。

 ステッピングモータの定電流制御の場合、モータを変えずに高速域のトルクを確保する方法があります。
 先ずは、図52をご覧下さい。

「図52」

 図52は、モータの「発生トルク」と「駆動電圧」と「交流抵抗」の相関を示したものです。
 この図は相関関係を単純化したイメージで、測定値をプロットしたものではありません。ご了解下さい。

 図52-1は、ドライバの電源電圧がDC24Vの場合です。
 モータ回転速度が高くなるにつれ、モータの交流抵抗値(図の赤線)は大きくなっていきます。
 定電流チョッパー回路はモータへの印加電流を一定にしようと働くので、PWM幅を拡げ駆動電圧(図の緑線)を大きくします
(先月号の図51も参照ください)。
 これはオームの法則、”電流=電圧÷(交流)抵抗”に従った動作です。
 分母(抵抗)が大きくなるので分子(電圧)も大きくして、電流値を一定に保つようにします。
 しかし高速になるほど交流抵抗が大きくなっていきますが、電源電圧が24Vなので駆動電圧は24Vまでしか上げることができません。
 従って駆動電圧が24Vに達した以後は、印可電流は下がっていきトルク(図の黒線)が低下します。

 そこでモータを代えずに高速域のトルクを確保する方法はないものか、の話となります。
 ドライバを電源電圧AC100タイプに変えます。
 すると図52-2に示しましたように、トルク低下がより高速域側へシフトされます。
 つまり高速の”ノビ”が良くなります。
 
 電源電圧がACタイプのドライバは、ドライバ内部で入力のAC100VをDC140Vに変換しモータ駆動電圧としています。
 例えばモータ定格電流を2Aとすると、電源電圧DC24Vドライバでは、交流抵抗12Ω相当の回転速度まで電流2Aを維持できます。

<交流抵抗=駆動電圧÷定格電流=24V÷2A=12Ω>

 一方、電源電圧AC100Vドライバでは、交流抵抗70Ω相当の回転速度まで電流2Aを維持できます。

<交流抵抗=駆動電圧÷印可電流=140V÷2A=70Ω>

 電源タイプの違いによる高速応答性の違いを判りやすくするために、かなり各パラメータの相関を単純化してお話ししました。
 AC電源タイプのドライバの方が高速のノビがかなり大きくなるような説明になりましたが、実際はそんなに大きな差にはなりません。また回転速度と交流抵抗値の相関は直線的ではないので、図52のようにはなりません。
 ですが同じモータでも、AC電源タイプのドライバの方が高速域のノビが良くなることは、確かです。
 何かの機会に、一度お試し下さい。(mt)

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<30 メールマガジン:2012年12月号>


「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 構成(10)」

 ステッピングモータドライバの定電流駆動回路の説明をしてきましたが、今号ではそのおさらいをします。

 定電流駆動回路の働きを一言で言うならば、”モータへの安定的な電力供給”です。

 この回路の性能の善し悪しは、ステッピングモータが持っている能力を充分に発揮させられるかどうかに影響します。また電気エネルギーをモータの回転エネルギーに変換する効率、つまり消費電力の大小に直結します。

 電源回路と一体となり、
(1)電力の安定供給
  電圧変動の抑制・電流の適正化
(2)モータの出力トルクの安定化
  モータの動きに合わせリアルタイムに電流制御
を行っています。
 商用電源(電力会社から供給される)の許容電圧変動幅では、特に制御機器に用いられるモータ動作に適さないケースが多くあります。
また必要以上の制御電流では発熱=非効率=無駄な消費電力となり、度が過ぎれば焼損を招きます。電流不足は、トルクダウンに直結です。
 そして負荷変動や外乱といったモータ動作環境変動にリアルタイムに応答し適正な電流に制御していかないと、ステッピングモータが持つ特性を発揮できなくなります。

 このようにまとめてしまいますと、とても簡単な回路構成のように見えます。
 実際、この回路に使われている部品はさほど多くはありません。
 が、ドライバ設計者のノウハウがぎっしり詰まった定電流駆動回路なのです。

 この回路の重要部品は、定電流チョッパーFETです。
 下図47・48内の朱色★印です。
 この機会に、ドライバ回路全体を改めて見て頂くことをお奨め致します。

「図47 INS50シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

「図48 INS500シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

 定電流チョッパーFETは、モータの動作環境の変化にスピーディに応答することが求められます。
 またPWMのON/OFFスイッチングがシャープに行われないと、モータ駆動全体の電力消費効率アップのためのFETにもかかわらず自身が電力浪費の元凶になってしまいます。
 また大電流が流れる回路を小さな空間に納めているため、部品間の配線長や太さや幅にも細心のセッティングが設計者に求められています。
 結構、大変な設計作業です。

 これで定電流駆動回路の説明は、一段落です。
 次号、新年号からは、相分配回路の説明に移ります。
 ステッピングモータを動作させる励磁パターンを制御する回路です。
 定電流駆動回路から供給される電力を、モータ各相に流したり止めたり
=各相に電力を分配していく回路です。

 本コラムは、これで本年最終号です。
 お読みくださいましてありがとうございました。 

 新年も引き続きおつき合い下さいますよう、お願い申し上げます。(mt)

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<31 メールマガジン:2013年01月号>

「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 「相分配回路」(1)」

 明けましておめでとうございます。
 本年も良い年でありますよう、お祈り申し上げます。

 早速ですが、本コラム新年1月号のスタートです。
 本号から「相分配回路」の説明に入ります。
 前号まではドライバの「電源回路」「定電流駆動回路」を説明してきました。
 これらは、モータが動くための”動力源”を制御する回路です。
 「相分配回路」は、モータの回転方向や速度を制御する回路です。

 おなじみの図47・48の、図右中央にあるブロックが「相分配回路」です。

「図47 INS50シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)

「図48 INS500シリーズ回路構成ブロック図」(画像をクリックすると拡大します)


 図左の「電源回路」から供給され「定電流駆動回路」で電流制御された電力(動力)を、この「相分配回路」はモータ各相(各コイル)に”分配”していきます。
 電力の”分配”によってモータの回転や速度がどのように制御されているのかを順を追って説明していくわけですが、まずは”分配”と何かについて見ていきます。

動画3は、2010年11月号掲載のものです。
「動画3」

 この動画はブラシレスモータの説明時に用いたもので単純化されていますが、ステータにコイルが置かれロータが永久磁石で構成されている構造はステッピングモータと共通です。
 動画3ではコイルが3個(A・B・C相)置かれています。

 動画をご覧下さい。
 あるコイル(相)は、(1)N極になったり(2)S極になったり(3)無励磁になったりと、三つの状態になります。
 (1)N極時のコイル電流を順方向とすれば(2)S極時は逆方向(3)無励磁は電流無し、つまりコイル(相)への電力の”分配”により三つの状態が作り出されます。
 この三つの状態の切替を、励磁ON/OFFや励磁スイッチングと言っています。

 それぞれのコイル(相)が三つの状態を取るのですが、各相それぞれがどのような関係で励磁ON/OFFされるかは決まっています。

 ある時、(1)A相:無励磁 B相:S極 C相:N極
 ならば、次は(2)A相:N極 B相:S極 C相:無励磁
 と、それぞれの相の励磁が切り替わっていきます。

 それぞれの相の励磁関係を相励磁パターンと言い、その励磁パターンの切り替わりを相励磁シーケンス(順序)と言います。
 基本ステップ(フルステップ)でステッピングモータを動かす相励磁パターンは、2相で4パターン、3相で6パターン、5相で10パターンとなります。
 相励磁パターンをシーケンス正順で切り替えるとCW回転するなら、逆順だとCCW回転となり、ある励磁パターンで止めるとモータはその位置で回転を停止します。

 この相励磁パターンを決められたシーケンスで切替ていくのが、「相励磁回路」です。 

 相励磁パターンシーケンスに従って、各相に電力を”分配”していきます。

 本号は、これで終わりです。
 今年もご愛読下さいますよう、お願い申し上げます。(mt)

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<32 メールマガジン:2013年02月号>

「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 「相分配回路」(2)」

 相分配回路の説明を続けます。

 相分配回路は、モータコイルへの電流ON/OFFと方向を制御する励磁パターンを生成します。

 先ずは、2012年3月号図46を元にした図53をご覧下さい。

「図53-1」

「図53-2」

 この図は、2相ステッピングモータを制御する励磁切替回路の概念図です。
 スイッチングFET(SWa+〜SWb-)は、機械式スイッチに置き換えてあります。
 二つのコイルの両端にはそれぞれ2個のスイッチ(+,-)が付き、合計8個のスイッチのON/OFFでコイル電流を制御します。
 図53-1では、SWa+とSWb+がONされ電源回路+側からコイルへ、そしてSW*a-とSW*b-がONされコイルから電源回路−側へ電流が流れています。
図中コイル脇に紫色矢印で電流の方向を示しました。
 図53-2は、ONされているスイッチのみを図示しました。コイルA相へのスイッチングが切り替わることで、コイル電流の方向が逆になります。
 OFFのスイッチは電気的には”存在しない”ので、図中から消し見やすくしました。 

 このように励磁パターンの切り替わりにより、スイッチON/OFFが切り替わり、コイル電流有無と方向も切り替わり、コイルの励磁に「引く/押す」されてロータが回転するわけです。
 励磁パタ−ンはプログラマチックなロジック(論理)設計にもとづくものなので、電源回路設計のようにアナログ技術を設計者に要求しません。
相分配回路は、プログラムと言ったソフトウェアをハードウェア化したもの、と言えるでしょう。

 なおこの図のモータはバイポーラ型2相なので、スイッチングFETは合計8個になりますが、ユニポーラ型2相では4個になります。
また5相ステッピングモータでは10個、3相では6個になります。

 さて、励磁パターンをどうやって決めるのか、ですが、要はモータがスムーズに回転するように構成すれば良く、組み合わせは一つではありません。が、現在使われているパターンが、人に直感的に判りやすい=プログラミングし易いものとして定着しています。
 ハーフステップ駆動を行う場合は、フルステップ駆動の励磁パターンをベースにステップ角がハーフ(半分)になるように励磁パターンが追加されます。
 マイクロステップ駆動を行う時は、設計者のセンスが発揮される場面で、各社いろいろな工夫が織り込まれた励磁パターンを作り出しています。
 励磁パターンの詳細は、次号以降順次説明していきます。
 マイクロステップ駆動の進化型である弊社のナノドライブ(超微少角制御)の説明も行っていく予定ですので、読者のみなさまに「なるほど」「なぁ〜んだ、そんな事だったのか」とご理解頂けるようなものにできればと考えています。
(mt)

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<33 メールマガジン:2013年03月号>

「ステッピングモータを駆動する装置=ドライバ 「相分配回路」(3)」

 相分配回路が出力する励磁パターンの説明に移ります。
 相分配回路は、先月号の図53の左に示しました回路ブロックで、2相ステッピングモータ制御では8本の出力線を持ちます。
 これらの出力で、図53では機械スイッチ(SWxxx)に置き換えてある、モータコイルの励磁を制御するFETをスイッチングします。
「図53-1」

「図53-2」

 さて図54は、相励磁パターンの説明に良く用いられるパターン表です。
励磁パターン
番号
SW
a+ a- *a+ *a- b+ b- *b+ *b-
1 1 1 0 1 0 1 1 0
2 1 0 0 1 1 0 0 1
3 0 1 1 0 1 0 0 1
4 0 1 1 0 0 1 1 0
2相フルステップ(1.8°/ステップ)
「図54-1」

励磁パターン
番号
SW
a+ a- *a+ *a- b+ b- *b+ *b-
1 1 0 0 1 0 1 1 0
1-1 1 0 0 1 0 0 0 0
2 1 0 0 1 1 0 0 1
2-1 0 0 0 0 1 0 0 1
3 0 1 1 0 1 0 0 1
3-1 0 1 1 0 0 0 0 0
4 0 1 1 0 0 1 1 0
4-1 0 0 0 0 0 1 1 0
2相ハーフステップ(0.9°/ステップ)
「図54-2」

 図54-1は、2相フルステップ(1.8°/ステップ)のパターン表です。
 左端列「励磁パターン番号」は1〜4までの4パターンを示し、8個のFETを制御するON/OFF信号で構成されています。表中の"1"はFETをONし、"0"はOFFすることを表しています。
 SWはa、*a、b、*bの4グループで、それぞれが”+”と”−”を持った計8個です。 

 先月号の図53-1が示すコイルの励磁状態は、図54-1の「励磁パターン番号2」が相分配回路から出力されている時です。
 同じく図53-2は、「励磁パターン番号3」の時です。

 相分配回路から、励磁パターン番号1→2→3→4→1→2→・・・または2→1→4→3→2→1→・・・の順でパターンが出力され、モータ軸はCWまたはCCWに回転します。

 励磁パターンでご注目頂きたい点は、次の2点です。
(1)同じグループ(例えばa+とa-)では、同時に”1”には絶対ならない。
  同時ONによるFETの破損を回避します。
(2)”+”と”*−”、”−”と”*+”は同じパターンになる。
 コイルへの電流の入り口が定まれば自ずと出口が決まってきます。
 これら注目点は、次ぎに説明しますハーフステップも同じです。

 図54-2が、2相ハーフステップ(0.9°/ステップ)のパターン表です。
 図54-1と-2の表中朱色で示したパターンは、同じものです。従って「励磁パターン番号」を同じにしてあります。
 ハーフステップの励磁パターンは、フルステップの励磁パターンの間に1-1、2-1、3-1、4-1をはさんだ構成です。

 これらn-1のハーフステップ用パターンは、フルステップ時のパターンと大きく異なる点が一つあります。
 それはなんでしょう?
 次号へと続きます。(mt)

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